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安全性分析試験紹介

染料や加工剤等の影響による安全性を分析機器を用いて評価します。

 
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ホルムアルデヒド

ホルムアルデヒド試験は、昭和49年厚生省令第34号(家庭用品の有害物質含有の規制に関する法律)に基づいており、アセチルアセトン法でホルムアルデヒドを検査する試験です。JIS L 1041アセチルアセトン法、中国のGB/T2912.1-2009標準によって執行します。

 

シックハウス

ホルムアルデヒドは、繊維製品の製造・加工・機能付加に当たって非常に多く使われてきた化学物質ですが有害性も有しております。では、どのような有害性を持つのかを考えてみましょう。
「背景」:
皆さんは、シックハウス症候群という言葉を聞いたことがありますか?
シックハウス症候群とは、建物の新築・改築時に使用される建材等に含まれる化学物質等を吸い込むことによって目や咽喉への刺激、頭痛等が現れる症状1)を指します。このシックハウス症候群が社会問題化したことにより、厚生労働省が、平成12年頃より室内空気環境の化学物質濃度の指針値を策定し、これをもとにして学校の空気環境3)や建材からのホルムアルデヒド等の放散量4)が示されています。
このシックハウス症候群を引き起こす恐れのある物質として、前回までにお話させていただいたホルムアルデヒドとVOCと呼ばれる数種類の揮発性有機化学物質が指定されています。今回は、この室内空気環境について考えてみたいと思います。

「指定物質について」:
  厚生労働省の定めた指針では、アルデヒド類として2種類、VOC等として11種類の計13種類が策定されています。
アルデヒド類は前回までにお話させていただいたホルムアルデヒドとアセトアルデヒド(ホルムアルデヒドによく似た化学物質)です。VOCとは、揮発性(気体になりやすい)有機化合物の総称で、指定されている物質の例としては、シンナーや塗料、接着剤等に含まれているトルエンやキシレン等5)があります。高濃度で吸い込むと有機溶剤中毒を引き起こすことがあります。 室内濃度指針値については、それぞれの物質ごとに規定されていて空気中に含まれる物質の濃度(μg/m3)で表わされます。
室内濃度指針値(大阪府H.P.より抜粋)

揮発性有機化合物主な用途室内濃度指針値
ホルムアルデヒド接着剤、防腐剤100μg/m3(0.08ppm)
トルエン塗料用溶剤260μg/m3(0.07ppm)
キシレン塗料用溶剤870μg/m3(0.20ppm)
パラジクロロベンゼントイレ用防臭剤、衣料用防虫剤240μg/m3(0.04ppm)

※量単位の換算は、25℃の場合による。ppmは百万分の1
「測定方法」:
標準的な測定方法は、採取方法によって2種類に分けられます。アクティブ法(吸引法)と呼ばれるポンプを用いて空気中の有害物質を採取する方法と、パッシブ法(拡散法)と呼ばれる捕集管を室内に放置し、24時間、空気中の有害物質を捕集する方法です。双方とも、測定前に30分間室内の換気を行い、その後5時間以上、部屋を閉め切った状態を保った後に測定を行います。
学校のサンプリング・分析については、文部科学省による「学校環境衛生の基準」においてアクティブ法では1教室あたりにおいて30分間の測定を2回、パッシブ法では8時間以上と定められています。

「まとめ」:
室内空気環境を汚染する化学物質は、主に建材や壁紙、接着剤等に由来していると考えられていますが、その他にも居住状態で使用される家具やクロス等の日用品からも放散されると考えられます。シックハウスを引き起こさないためには、汚染物質を含まない、若しくは低減された建材を使用することが望ましいですが、汚染物質を含む家具等を持ち込まないことも重要です。家具やカーペット、カーテン等を作る際には、この点にも考慮いただければと思います。

繊維製品の規制関連

「背景」:
ホルムアルデヒドは、非常に有用でさまざまなところで使用されているとともに、その有害性から種々の規制を受けている化学物質です。では、なぜホルムアルデヒドは規制を受けなければならないのでしょうか。
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」をもとに、繊維関連について、少し詳しくホルムアルデヒドについて説明していきましょう。
「ホルムアルデヒドとは」:
ホルムアルデヒドの化学構造はHCHOまたはCH₂Oで、有機化合物の一種です。有機化合物とは、炭素・水素・酸素などを主な構成成分とする化合物の総称で、たんぱく質や油脂なども同じグループに入ります。
ホルムアルデヒドは、沸騰する温度が-19.5℃と通常の室温では気体になり、また、水に大変溶けやすい物質で、このホルムアルデヒドを水に溶かした溶液をホルマリンと呼んでいます。
「用途」:
ホルムアルデヒドは非常に用途の広い化合物であり、プラスチックの原材料や防腐剤(カエル等の標本を満たしている液体(いわゆるホルマリン漬け)として使用されていました)、工業用試薬などとして広く用いられています。
繊維関連では、防しわ性や防縮性を与えるための樹脂加工時に使用する湿潤架橋剤や接着剤にホルムアルデヒドが含まれるケースがあります。
「有害性」:
ホルムアルデヒドの有害性については、「化学物質の初期リスク評価書」に詳しく記述されており、その中で、アレルギー性接触皮膚炎(かぶれ等)を引き起こす恐れのある化合物であることが示されています。
アレルギー性接触皮膚炎とは、特定の物質と接触することによって生じる皮膚の炎症の内、免疫システムによるものと言われています。
アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)は、漆や金属など無数にありますが、ホルムアルデヒドもそのうちのひとつです。
このような有害性を持つことから、日本では、先に示した「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」の中で、2歳以下の乳幼児向け繊維製品には吸光度0.05以下又は、試料1g当たり16μg以下、その他の下着、寝衣、手袋等、皮膚と長時間接触することが考えられる繊維製品について試料1g当たり75μg以下と規制しています。
以上に述べてきましたように、ホルムアルデヒドは皮膚炎を引き起こす危険性のある化合物ですが、水に溶けやすいことから、洗浄によってその大部分を取り除くことが可能です。

樹脂加工における発生

「背景」:
繊維製品に多用される樹脂加工剤および糊剤について、ホルムアルデヒドの放出という観点から少し詳しく述べてみたいと思います。
「樹脂とは」:
またまた化学のお話をさせていただきますが、ご容赦ください。樹脂とは、ポリマーと呼ばれる化学物質の一種です。ポリマーとは、モノマーと呼ばれる小さい分子がたくさんつながって、非常に大きい分子量を持った化合物です3)。例えば、私たちの身近では、たんぱく質やプラスチック、合成繊維もポリマーの一種で、接着剤にもポリマー系のものが存在します。
尿素ホルムアルデヒド樹脂(以下ユリア樹脂)を例にしてポリマー構造を見ると、図のようにモノマーである尿素分子とホルムアルデヒド分子が交互にたくさんつながっている様子が見られます。では、ホルムアルデヒドを介する樹脂の化学反応とはどんなものでしょうか。ユリア樹脂を例として見てみましょう。

ユリア樹脂は、次のような化学反応をします。
式中のH2N-△-NH2は尿素分子、◎=Oはホルムアルデヒド分子です。それぞれがモノマーとして、どんどんつながっていくことでポリマーであるユリア樹脂が作られます。式の中で水分子(H2O)が取れて反応が進行していることがわかります。このような反応を脱水縮合と呼び、この反応が後のホルムアルデヒドの放出の時に重要な反応となります。
「ホルムアルデヒドの放出」:
  縮合反応で水分子が取れることで反応が進むことを先に示しました。しかしながら、この反応は一方方向に進むのではなく、逆向きにも進行します。このような反応を可逆反応と呼びます。
私たちの身の回りの空気中には、水分子が多数存在しています(いわゆる湿気)。この水分子がユリア樹脂と反応することにより、樹脂の分解(このような反応を加水分解と呼びます)が生じ、その結果ホルムアルデヒドが放出されると考えられております。この反応の厄介なところは、樹脂が存在する限り進行することです。つまり、接着剤や防しわ性を付与するための樹脂として使用した場合は、継続してホルムアルデヒドを放出し続けることになります。
このような樹脂を用いた場合は、水洗いでは根本的にはホルムアルデヒドを取り除けませんので、ご注意ください。

繊維製品への移染

「背景」:倉庫や陳列棚で保管中の商品が、ホルムアルデヒドによって汚染される事例が知られています。
ホルムアルデヒドの移染を防ぐためにはどのような方法があるのでしょうか。移染のメカニズムをもとに考えてみましょう。
「移染のメカニズム」:
ここでは、移染のメカニズムについて考えてみましょう。
ホルムアルデヒドは室温では気体になる物質です。その為、ホルムアルデヒドを発生する物が保管室内に置かれると、周辺製品へホルムアルデヒドが移染するものと考えられます。
「管理・測定手法」:
では、移染を防ぐためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
対策として考えられることは、ホルムアルデヒドの発生源となるような物を同一室内に置かないということが最重要になります。
また、ホルムアルデヒドを通さない包装により製品を密封することも重要です。
そして、空気環境中のホルムアルデヒド濃度状況を管理するということが基本姿勢になります。
移染調査キットは、調査場所におけるホルムアルデヒドの移染度合を簡便な方法で予測するためのものです。
キットに入っている試験布(綿・毛)を一定期間調査場所に吊るし、試験布に移染したホルムアルデヒド量を厚生省令第34号の方法により分析する事によって移染の度合を予測します。
「最後に」:
ホルムアルデヒドは、「有害物質を含有した家庭用品の規制に関する法律」によって厳しく規制されている為、ご存知の事も多々あったかと思いますが、再確認をしていただければと思い、改めて紹介させていただきました。
ホルムアルデヒドは、健康被害を引き起こす危険性のある化合物です。皆様の商品から健康被害を起こさないために、ボーケンも一緒に考えていきたいと思っています。是非、ご参考にしてください。

提取液的pH值

「目的」:
生地の抽出液のpHを測定する試験です。
一般的な生地のpHは中性~弱酸性に調整されていますが、生地を染色・加工する際に使われる薬剤や加工剤が十分洗い落とせていないと、極端な酸性やアルカリ性を示す事があります。一般的に健康な人の肌は弱酸性を示すと言われ、極端な酸性やアルカリ性を示す物に触れると皮膚障害を引き起こす恐れがあります。

「方法」:
「JIS L 1096織物及び編物の生地試験方法」に基づいて試験を実施します。 ガラスフラスコに50mlの蒸留水を入れて2分間沸騰した後、細かく切った試験片5.0gを投入し、栓をして30分間放置します。30分後、抽出液を25℃±2℃に調整し、pHメーターで抽出液のpHを測定します。